
●本の紹介(3)
「KMAPによる制御工学演習」,
片柳亮二 著,産業図書,2008年
9月,(2000円+税)
本書のKMAPは,航空機の運動解析用に開発されたソフトをバージョンアップする形で,制御系ルーチンを初心者にも簡単に使えるように機能追加したもの.制御工学は設計技術者にとって必須の知識.本書は,基礎から現代制御まで実際の設計現場で活用可能な知識とツールを提供します.

●本の紹介(2)
「航空機の飛行力学と制御」,
片柳亮二 著,森北出版,2007年
11月,(3800円+税)
本書は,航空機の飛行力学を理解するための基礎となる運動方程式や飛行特性解析式について,その導出過程を省略しないで詳細に記述し,また飛行制御の基礎事項についても例題を通して平易に解説した入門書.実際の航空機設計開発の現場の専門家にとっても知識の整理に役立ちます.

●本の紹介(1)
「航空機の運動解析プログラム
KMAP」,片柳亮二 著,産業図書,2007年7月,(1900円+税)
本書は,航空機の飛行運動シミュレーションや飛行制御系の安定性解析などの基礎的な解析をパソコン内で誰でも簡単に行うことができる「航空機の運動解析プログラムKMAP(ケーマップ)」のプログラム解説書です.(KMAPとは“Katayanagi Motion Analysis Program”の略) その特徴は以下.
① KMAPのプログラムは,6自由度非線形運動シミュレーションと線形安定性解析の両方の結果を1つのインプットデータから得ることができる便利なプログラムです.従来は,制御系の安定性解析と6自由度シミュレーションは別々のプログラムを作成して解析する必要があり非効率でしたが,KMAPを用いることで同時作業が可能となりました.実際の航空機設計開発の現場でのセカンドチェック用ツールとして活用可能です.
② 航空機の運動方程式を学生に理解させることは比較的短時間で可能ですが,学生に自らプログラムを作成して運動シミュレーションや安定性解析を行わせることは難しいことです.KMAPを用いて例題を通して実際に計算を行うことで,より深く理解できると考えています.また,市販の制御系プログラムが非常に高価であり,学生や一般の人が自由に使えないこともKMAP開発の動機の一つになっています.
③ 金沢工業大学のフライトシミュレータ(下記参照)は,KMAPベースで動いています.従って,解析に用いた同じインプットデータを用いて,簡単にリアルタイムのシミュレータ実験を行うことができます.
●KMAPではどんな解析ができるのか
①KMAPによる解析例 ─ 「航空機のピッチ角制御」
KMAPを用いると,制御則を含んだ航空機の運動解析が容易に実施できますが,下記に簡単なピッチ角制御の例を示します.縦系のピッチ角コマンドθc に対して機体のピッチ角θ を追従させる制御系です.下記に示す機体ダイナミクス以外を制御則部としてインプットデータに書き込みます.なお,機体ダイナミクス部は設定済みであるのでユーザは作成不要で,機体の諸元と空力データを準備するだけです.

航空機のピッチ角制御ブロック図
上記制御則部のインプットデータを下記に示します.制御則の各ブロック図の入出力に示す Z および U 番号に対して,その関係式を記述します.リードラグやリミッタ,またアクチュエータ等はKMAP内に各種関数として定義されているので,下記に示すように簡単に利用することができ,上記制御系がわずか13行のインプットデータで作成できます. (詳細は飛行力学基礎講座参照)

②KMAPによる解析例 ─「航空機のピッチ角LQI最適制御」
KMAPバージョン31以降では,最適制御等の現代制御理論による解法が可能となりました.下記に航空機のピッチ角制御におけるLQI(サーボ系)の例を示します.縦系のピッチ角コマンドθm に対して機体のピッチ角θ を追従させる積分型最適制御系です.下記に示す機体ダイナミクス以外を制御則部としてインプットデータに書き込みます.なお,機体ダイナミクス部は設定済みであるのでユーザは作成不要で,機体の諸元と空力データを準備するだけです.

航空機のピッチ角LQI最適制御ブロック図
(このブロック図をクリックすると大きく見ることができます)
上記制御則部のインプットデータを下記に示します.制御則の各ブロック図の入出力に示す Z および U 番号に対して,その関係式を記述します.LQI最適制御の解析ルーチンは21行目の {OptC(AP,B2,CP)5}I4J1K1;を記述することで呼び出すことができます.このように,簡単に最適制御則を得ることができます.これらの現代制御理論による解析ルーチンの使い方については,「KMAPによる制御工学演習」(片柳亮二著,産業図書,2008年)をご参照下さい.

このときのシミュレーション結果を次に示します.ピッチ角θが目標値に良好に追従している様子がわかります.

●フライトシミュレータ
最新鋭の大型旅客機を模擬した本格的なフライトシミュレータを導入しました.学生が設計した航空機のデータをソフトウェアで組み込み,実際に体験しながら性能を評価できる設備です.

●機体構造とリグ装置
大型旅客機の機体構造および舵面アクチュエータを模擬したリグ装置がフライトシミュレータと接続されました.これまでのフライトシミュレータは全て数学モデルによる飛行模擬でしたが,リグ装置を接続したことによりフィジカルシミュレーションが可能となり,舵面作動の遅れも含む,より実際の飛行環境に近い状態で飛行特性評価が行えるようになりました.


●金沢工業大学 工学部 航空システム工学科は,2008年度は1年生83名,2年生63名,3年生50名,4年生57名で教員は9名です.
<専門・キーワード> : 研究テーマ例
・宮野 靖教授<航空構造材料工学>
航空機に用いられる複合材構造の耐久性評価,環境に対応した複合材料・構造の開発
・深澤塔一教授<空力弾性学,CAE>
メカニカルバード、ソーラープレーン、空中ロボット、人力飛行機などの設計・製作・性能評価
・久保村健二教授<構造動力学,複合材料>
展開型超大宇宙アンテナ,人工衛星材料,新型翼列方式による風力発電,空飛ぶ自動車などの研究
・片柳亮二教授<航空機制御,飛行力学>
航空機の最新飛行制御システムの開発,操縦シミュレータ
・菊川廣繁教授<航空機構造設計,航空機発展の歴史>
航空機の負荷・強さ・強度・剛性・速さ・構造などの評価,空飛ぶ自動車の開発
・藤 秀実教授<熱流体/燃焼工学、航空用ガスタービン>
燃焼器の排ガスクリーン化、高温・高負荷化研究、燃焼器周りの流れ、燃焼の数値シミュレーションの研究
・中島 円準教授<数値熱流体力学>
翼・機体まわりの流れの数値シミュレーション,流体・構造連成問題,乱流モデルの研究
・吉田啓史郎講師<航空機構造力学>
航空機に用いられる複合材料の力学的特性に関する研究
・田中基嗣講師<複合材料構造学>
複合材料の損傷許容性・耐衝撃性,大型複合材料成型技術に関する研究